2012年4月22日日曜日

OCEB講座 第15回 BMM

筆者は直接経験した事はないのですが、知り合いの教師をやっている人などによると、最近の学生や生徒の名前に風変わりなものが増えて来て、いったい何と読むのか見当もつかず、名乗られて初めて「ああ、なるほど!」と思わず唸らせる判じ物のような名前、いわゆるキラキラ名にしょっちゅう遭遇するようになって来たそうです。
筆者はこのような話題になると、「慣れの問題だよ、慣れ。そのうち世の中そんな名前だらけになって、反って平凡な名前になるよ。」と言って、無理矢理話題を変えようとします。

筆者がなぜこの話題を避けようとするか?その訳は、すでに感づかれた方もおられるかもしれませんが、次に説明します。

2012年4月20日金曜日

OCEB講座 第14回 組織設計

鎌倉 源氏池
90年代、筆者はシリコンバレーのIT系のいわゆるベンチャー企業で働いていた事がありますが、立ち上がり期で小規模なため、一人でいくつものロールをこなさなければならないため、営業サポートや営業そのものもやったりしていました(本職の営業から見ればまねごとレベルですが)。
ご存知の通り、アメリカの会社は一部の企業を除くと、みな田舎町にばらばらに点在し、訪問するだけでかなりの時間とコスト(飛行機代や宿泊費)がかかり、一見すると、かなり非効率的な社会構造です。
しかしながら、いくつかの工夫があり、距離の遠さをカバーしてあまりあるものも存在しました。
その中の一つが本日お話しするコーポレート・タイトルです。
CEOとか、CFOなどのいわゆるCタイトルは、最近では日本でもかなり普及してきていますが、当時は少数派でした。
このCタイトルは、外部の人間から見ると、サービスの外部への共通のインタフェースを宣言しているようなもので、誰がどの分野にリスポンシブル(実行責任)でアカウンタブル(説明責任)かを表明している一種の識別子と見なす事が出来ます。
ベンチャー企業にとって営業と言うのは往々にして最大の弱点であり、技術力はあるが営業戦力は極めて限られている、と言う方がむしろ通例です。
製品の性質によって取る営業戦略は異なりますが、コンシューマ製品の分野では、初期はチャネルセールス(代理店販売)しかしない、と言うのが当時最もオーソドックスなアプローチでした。
しかしながら、当時筆者が勤めていた会社が作っていた製品は、ある程度以上の規模の企業や組織でしか使わないようなものでしたので、直販のアプローチを取っていました。
これには別の理由もあり、当時、開発費が枯渇しかかっており、顧客だけでなく出資者も必要としていたからです。
この場合、営業担当は販売先となりうる企業や組織を選びCIOやCTOにコンタクトを取ります。
CIOやCTOは、当然現行システムやサービスにも責任を持ちますが、日常的には、将来の拡張計画が主な活動となり、常に技術や業界の新しい情報を必要としています。
従って、興味分野が合えば、本人もしくは代理人や関係部署の代表などに対して会合を開くチャンスを持つ事は比較的容易でした。
また、CIOやCTOも往々にして新しいサービスの提供に対して強いプレッシャーを受けており(経営者にせっかちな人間が多いのは、洋の東西を問いません)、また有力なテクノロジーを持つ投資先を探している場合もあります。
(ベンチャー企業の顧客が、同時に出資者でもあると言うのは珍しくありません。)

このように、Cタイトルと言うのは、設計と言う観点から見ると、仕様(外部宣言)と実装(内部構造)を分離するコンポーネント指向設計の組織版と見る事が出来ます。

また、2000年代に入り、OMGにビジネス・ユーザー系の会員が急増したのも、このCIOの責任範囲の拡大に対応した事が大きな原因です。
2000年以前は、OMGの会員は圧倒的にメーカー系でビジネス・ユーザー系企業はほとんどいませんでしたが、現在はビジネス・ユーザーが過半数を占めています。
これは、2000年以前には、単なるコストセンターと見なされがちだったIT部門が、最近では戦略部門と見なされ、 企業戦略の重要な担い手となり、またCIOオフィスの責任範囲が拡大して来た状況と一致します。
ビジネス・ユーザー系会員の目的は、標準化に積極的に参画する事よりも、技術動向の調査(OMGのアウトプットは、要素技術ではなく、方式設計(アーキテクチャ)や設計方法論に強い影響を与えます)と、メーカー系への情報調査と影響力の行使です(2000年以降は、IT部門は従来のメーカー系の提案を待つ、「待ち」の姿勢から、積極的に「攻め」の姿勢に変わって来ています)。

2012年3月14日水曜日

OCEB講座 第13回 組織構造と戦略/ビジョンの一致

逗子の岩殿寺 泉鏡花ゆかりのこの寺は桜も開花中


鎌倉は暖かいか?とよく聞かれますが、都内とさほど変わりません、と言うのが大方の感想ではないでしょうか。
しかしながら、鎌倉の隣の三浦半島に一歩足を踏み入れると随分暖かい事が実感されます。
梅の開花やうぐいすの初音もずっと早く、農作物の作成りも良いようです。
しかし良い事ばかりではなく、杉花粉の発生も早いのは困った事です。

縦の権力と横の権力

前回は、縦型の力、責任と権限の関係のお話をしましたが、本日は横型の力について議論したいと思います。
縦型組織の問題点は日本の役所なんかを想定すれば、学生さんであっても理解は容易だと思います。
主な問題点として、
  • 下部組織ごとにお山の大将を作りやすく、西洋流に言えば財務省帝国、文部科学省帝国などが発生し(欧米ではお山の事を〇〇帝国と命名する事が多い)、職員は全体ではなく自分の所属する下部組織のためにのみ働くようになります。
  • 一つの問題に対し、各下部組織の責任が断片化し、それでなくとも責任回避型に走りがちなのに、ますます責任の所在が不明となる。
などが挙げられます。 これは日本の役人が特殊だからではなく、万国共通に見られる症状であり、言わば縦型組織の自然現象です。

この問題を打破する一つの手法としては、部門横断的に権力の行使が出来る横型の力ですが、外交や軍事などの大きな問題ではよく使われますが、問題によってはポリティカル・ゲームが発生しやすく、強い権力(ハードパワー)よりもソフトな力の行使が望ましい分野も多く(特に恒常的、自発的な改善が望まれる分野)、プロセス志向型組織が欧米で増えて来ているのは、BPMのこういう特徴を踏まえた結果と言えるでしょう。
一般にプロセス志向型組織では、横型の権力はソフトパワーを用います。代表的な横型権力の源泉は問題解決のための予算を握ることです。それ以外は硬軟様々な力の行使を行ない一つのゴールを目指して行きます。
また、縦型組織の最大の関心事である昇進経路ですが、基本的に横向きの力を発揮できる人、チームプレーヤーを第一に昇進させます。これは、組織文化の大きな変革であり、自部門至上主義、ナローマネジメント(旧帝国の再建を狙う勢力)は真っ先に排除の対象になります。

北米では、米国政府だけでなく州政府でもBPMに着手しています。と言うよりも、むしろ民間よりも、BPMのケース・スタディの宝庫の観があります。
アメリカ人は役人の官僚主義化に厳しい見方をするケースが多く、取り組みが遅いと見る向きもありますが(ちなみに日本政府の官僚主義は、もはやこの世のものとは思えない、信じられないレベルだそうです)、日本人の感覚から言えば、非常に積極的にやっているように見えます。






2012年3月6日火曜日

OCEB講座 第12回 組織構造と戦略/ビジョンの一致


自宅からちょっと歩いた所に竹林で有名な禅寺があり、観光客の少なそうな時期を見計らって時々散歩がてら立ち寄ります。

竹林に入ると柔らかな緑の光に包まれ、SF風に言うと異次元空間に迷い込んだ感があります。

裏手は鎌倉石の断崖が巡り、かつて鎌倉が海の底であった太古の昔を彷彿とさせます。
庭の中にはお茶席があり、抹茶や菓子のサービスが受けられます。

組織設計とBPM

前回の講座で組織構造とビジョン/戦略の不一致の話をしましたので、ビジネス_モチベーション・モデル(今後はBMMと略す)の話を一旦それて、組織構造の話をしたいと思います。

ビジョンや戦略に組織構造やプロセスを合わせる問題は、OCEBでは組織の設計と言うテーマで出題されます。
とは言っても、BPMをやっている人が皆んな組織の設計に従事するわけではないので、主に、OCEB上級(アドバンスト)レベルで出題され、本講座の対象であるファンダメンタルでは、組織に関するごく簡単な問題のみが出題されます。
例を挙げれば、財務部(Financial Dept.)の責務は?とか、マーケティング戦略の基本は?と言った他愛の無い問題などです。
  • (恐らく、組織に属していてBPMをやらなければならない人にとっては半分以上(つまり合格基準点以上)は既知の内容だと思うのと、ブログのネタになりにくいので割愛します。 学生さんなどは書店に並んでいるMBA入門の様な書籍を参照する事をお勧めします。参考までに英語版のタイトルが面白い書籍例へのリンクを張っておきます。) 

従って ここでは、組織設計の基礎知識に付いて触れたいと思います。

工学分野に限らず、どんな分野であろうと、設計、デザインと名のつくものはセンスと理論の混合体です。
建築を例に取ると、どんな家も物理法則からは逃れられず、物理法則を無視した建築物は崩壊してしまいます。しかし、逆に物理学の知識に富んだ人が好い家を設計できるかと言うとこれも真ではありません。
 組織設計も同様で、OCEBでは基本的な組織の力学が出題されますが、これは設計する上での必要知識であって、十分条件では無い事に注意してください。

組織の内外には、宗教、政治、経済等様々な力が渦巻きますが、組織設計の最もベーシックな力学は責任と権限の関係です。
組織はその目的の遂行のために特定の人間(マネジメント)に何らかの任務・責任を負わせますが、同時に権限を与えます。
 責任と権限は出来るだけ一致する事が望ましいのですが、現実的には完全に一致させる事は難しい事です。
ピータードラッカー氏の書籍にも挙げられていますが、極端な場合では責任と権限が完全に乖離し、責任は無いが権限だけがある部門が発生したり、逆に権限は無いのに責任だけ取らされる部門が 出来たりします。
また、自部門の責務を果たすために、他部門の協力や同意が絶対に必要であると言った場合も多く発生するために、責任と権限と言ったいわば縦の正式な権力とともに、横型の非公式な力、影響力を行使しなければなりません。
さらに、マネジメントの気質として責任範囲を広く解釈するタイプと、狭く解釈し自部門だけが良ければそれで良しと言うタイプ(いわゆるナローマネジメント)があります。

昔の組織は、この責任と権限と言った縦の力関係ですべて処理しようとしていましたが、業務が複雑になるにつれ横型の力の重要性がどんどん増してきました。
しかし、縦の力は組織が組織であるための基本的な力です。組織設計の上では必ず考慮する必要があります。

(続く)



2012年2月28日火曜日

OCEB講座 第11回 ビジネス・モチベーション・モデル

 組織構造とビジョン/戦略の不一致  

ジム・クーリング博士の「S/W Engineering for Realtime Systems」の翻訳(正確には下訳はあるので監訳)作業をチームを組んでやってますが、そのメンバーの一人M君は、最近まで携帯電話の開発に従事していたそうです。(直近では、アンドロイドのハードウェアとソフトがからみ合う部分を担当)。
過酷な事で知られる携帯電話の開発現場ですが、最大の課題は中韓の開発にどうやって追いつくかだったそうです。
彼の現場から観点から見た日本の開発現場の問題(中韓の開発現場と比較して)は、個々の技術者のスキルの問題よりも、むしろ、要件マネジメントのまずさと、要件分析とそれに続く開発プロセスそのものの問題であると見ています(彼は、ペーパーも準備中だそうです)。

現在世界的には、R&D型のソフトウェア開発は何らかの形で繰り返し(イテレーション)が入るスパイラル型が主流ですが、 彼がいた現場では相変わらずウォーターフォール型で、しかも、ここ十年はほとんど変わっていなかったそうです。それに対して、彼が知る中韓の現場では、技術者達はプロセスそのものを改善の対象と見なし、ダイナミックにプロセスの変更を行なっています。

要件マネジメントに加え、プロセスそのものに着目する慧眼はさすがだと思います。また 、この問題は一つ携帯電話業界だけの問題ではなく、日本の大部分の組織に内在する問題です。携帯電話開発は、過酷な国際競争にさらされて問題が顕在化した不幸な実例でしょう。

組織の設計の問題

最近の日本の組織の意思決定が非常に遅い事は世界的に有名ですが、これは日本人が怠け者になったと言うよりも、その組織構造に問題があります。
日本の組織のプロセス構造を見ると、正式のプロセス以外の調整作業(Coordination Work) の多さが非常に目立ちます。
調整作業そのものは決して悪い事ではなく、純然たる定型業務でも無い限り必ず必要となるプロセスですが、多くは組織の目的と組織構造(プロセス構造を含む)が合致していない場合に調整が急増します
また、組織構造(プロセス構造)が、それを取り巻く社会環境と合致しない場合にも増大します。
膨大な調整作業の結果、極端な例では、マネジメントは調整機能しか果たしてないケースが間々あります。(日本では、この極端なケースの方がむしろ多いようです。)

(続く)


2012年2月24日金曜日

セミナーのご案内 SysML, ソフトウェア工学、形式手法

OMGのソーリー会長が来日されることになり、急遽、ミニ・セミナーを開催することになりました。
(終了しました)

期日: 3月1日木曜日 10:00 〜
場所: 東海大学高輪校舎 3号館(通称 大学院棟) 1階会議室
(高輪キャンパスへのアクセス情報)

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参加費: 無料
申し込み法: 終了しました。

当日のアジェンダ:
  • 10:00〜 11:30  SysMLセミナー
  • 11:30〜 12:15  リアルタイム・ソフトウエア工学とSysMLのプロモーション
  • ランチ
  • 13:00〜 14:00  モデルベース形式手法研究会とOMG


概要:  いずれも講演会形式ではなく、会議形式で行います。
  • SysMLセミナー
    • ソーリー会長によるオープニング・スピーチ
    • SysMLの標準化状況
    • 北米や海外での普及動向 、国別、産業別
    • 情報交換、意見交換  等
  • リアルタイムソフトウェア工学とSysMLのプロモーション
    • これは、純然たるマーケティング・セッションです。
    • 「S/W Engineering for Realtime systems」の翻訳状況
    • 日本語版OCSMPの準備状況
    • 「Practical Guide for SysML」の翻訳出版予定
    • OMGとのジョイント・マーケティング等
    • 内容はマーケティングであり(書籍、資格試験、トレーニングなど)、必ずしも技術者向けではありませんが、非公開ではありませんので、ご興味がある方はご参加ください。
  • モデルベース形式手法研究会
    • 現在、モデルベースの形式手法の研究会の立ち上げを準備中です。OMGの未公開情報にもアクセスする場合があるため、運営はOMG参加企業メンバーとなりますが、本セッションは、どなたでも参加可能です。
    •  モデルベースの形式手法、存在論(Ontology)メタモデル等の動向にご興味の有る方は、奮ってご参加ください。



2012年2月13日月曜日

OCEB講座 第10回 ビジネス・モチベーション・モデル


筆者は、大学の組込み技術研究科と言うところでモデリングを教えていますが、この学科の卒業生の多くは組込みソフトウェア業界へ進んで行きます(反対に、業界で働きながら学ぶ学生もいます。)
さて、この組込みソフトウェア業界と言うのは、(筆者も世界中の業界を調査した訳ではないのですが)恐らく日本独自の業界ではないかと思います。
もちろん組込みソフトウェアは世界中で盛んに開発されており、今や組込みソフトが載っていない機械を探す方が難しい時代ですが、他国では業界をなすほどの大きな産業分野には育っていません。
理由はいたって単純で、他国では組込み系ソフトをあまり外注に出さず内製し、むしろハードの開発の方を外に出す傾向が強いためです(特に先進的な分野ほど、この傾向が強いように思えます)。
これは、節分の豆まきのように「ソフトは内、ハードは外」と単純に決めているからではなく、他国では、一般的に付加価値の高い作業(プロセス)を内製にし、低い作業(プロセス)を外製にしたがる傾向が強い事に起因します。
 これらの事から、『日本の経営者はコストには敏感だが、価値には鈍感である』と言う命題を証明する事にはなりませんが、傾向の一端は示していると思います。
なお、日本の経営者の名誉のために言えば、欧米でも、コストカットを進めた行った結果、企業価値を どんどん減じて(中には完全に消滅させて)しまった経営者は数多くいます。まさに、企業にとっては下手な外科医に当たったようなものです。

価値を創造したり発見できる才能を持つ経営者は、企業にとっても希少な資源です。


ビジネス・モチベーション・モデル