鎌倉 源氏池 |
ご存知の通り、アメリカの会社は一部の企業を除くと、みな田舎町にばらばらに点在し、訪問するだけでかなりの時間とコスト(飛行機代や宿泊費)がかかり、一見すると、かなり非効率的な社会構造です。
しかしながら、いくつかの工夫があり、距離の遠さをカバーしてあまりあるものも存在しました。
その中の一つが本日お話しするコーポレート・タイトルです。
CEOとか、CFOなどのいわゆるCタイトルは、最近では日本でもかなり普及してきていますが、当時は少数派でした。
このCタイトルは、外部の人間から見ると、サービスの外部への共通のインタフェースを宣言しているようなもので、誰がどの分野にリスポンシブル(実行責任)でアカウンタブル(説明責任)かを表明している一種の識別子と見なす事が出来ます。
ベンチャー企業にとって営業と言うのは往々にして最大の弱点であり、技術力はあるが営業戦力は極めて限られている、と言う方がむしろ通例です。
製品の性質によって取る営業戦略は異なりますが、コンシューマ製品の分野では、初期はチャネルセールス(代理店販売)しかしない、と言うのが当時最もオーソドックスなアプローチでした。
しかしながら、当時筆者が勤めていた会社が作っていた製品は、ある程度以上の規模の企業や組織でしか使わないようなものでしたので、直販のアプローチを取っていました。
これには別の理由もあり、当時、開発費が枯渇しかかっており、顧客だけでなく出資者も必要としていたからです。
この場合、営業担当は販売先となりうる企業や組織を選びCIOやCTOにコンタクトを取ります。
CIOやCTOは、当然現行システムやサービスにも責任を持ちますが、日常的には、将来の拡張計画が主な活動となり、常に技術や業界の新しい情報を必要としています。
従って、興味分野が合えば、本人もしくは代理人や関係部署の代表などに対して会合を開くチャンスを持つ事は比較的容易でした。
また、CIOやCTOも往々にして新しいサービスの提供に対して強いプレッシャーを受けており(経営者にせっかちな人間が多いのは、洋の東西を問いません)、また有力なテクノロジーを持つ投資先を探している場合もあります。
(ベンチャー企業の顧客が、同時に出資者でもあると言うのは珍しくありません。)
このように、Cタイトルと言うのは、設計と言う観点から見ると、仕様(外部宣言)と実装(内部構造)を分離するコンポーネント指向設計の組織版と見る事が出来ます。
また、2000年代に入り、OMGにビジネス・ユーザー系の会員が急増したのも、このCIOの責任範囲の拡大に対応した事が大きな原因です。
2000年以前は、OMGの会員は圧倒的にメーカー系でビジネス・ユーザー系企業はほとんどいませんでしたが、現在はビジネス・ユーザーが過半数を占めています。
これは、2000年以前には、単なるコストセンターと見なされがちだったIT部門が、最近では戦略部門と見なされ、 企業戦略の重要な担い手となり、またCIOオフィスの責任範囲が拡大して来た状況と一致します。
ビジネス・ユーザー系会員の目的は、標準化に積極的に参画する事よりも、技術動向の調査(OMGのアウトプットは、要素技術ではなく、方式設計(アーキテクチャ)や設計方法論に強い影響を与えます)と、メーカー系への情報調査と影響力の行使です(2000年以降は、IT部門は従来のメーカー系の提案を待つ、「待ち」の姿勢から、積極的に「攻め」の姿勢に変わって来ています)。
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