2016年9月18日日曜日

成長分野

奈良公園 
昨日は、法隆寺に行ったついでに、藤ノ木古墳も見てきました。

成長分野

筆者は若い頃 ー1980年代頃 ー、外資系の大手のコンピュータメーカーに勤めていた事があり、そこで製品企画の仕事などをしていました。
その会社には、各事業部ごとにストラテジストという社内タイトルを持つ人達が少人数存在していて、普段はそれぞれの分野の専門家として普通に働いているのですが、半年に一度ぐらいの割で集まり、主に会社や業界の将来展望などを議論する場が設けられていました。
 そして、当時の話題の中には ー その時は全く気にもしていなかったのですが ー、数十年経った今、折に触れ印象深く鮮明に思い出すものがあります。

その1つが、いわゆる投資のための戦略ポートフォリオを組む上での基礎資料となる市場の分野別成長予測でした。
まず市場を適宜議論し定義分割し、その分割された分野ごとに成長予測を行うわけですが、たとえ専門家であっても真の正解を知らない将来に関しする予測を、今でも行われる、いわゆる『専門家のコンセンサスを取るグループ討議の技法』を使って行なっていました。
この手法により個々の専門家の個人的なバイアスがある程度取り除くことができ、例えば誰でも自分が興味ある分野 ー 多くは自分の専門分野 ー の将来像は過大に見積もる傾向がありますが、この手法を取るとその偏りがある程度補正されます。
こうして、その時点での最善のguess(当て推量)を取りまとめたものを見る機会があったのですが、今思い返してもかなり的中しています。新規分野に関してはドンピシャと言って良いでしょう。
もっとも、見積もられた成長率は、 実際、後年明らかになった劇的な急成長に比べると遥かに低いのですが、これは、投資判断という資料の性質上、少なくともこのぐらいの成長はするだろうという極めて控えめな形でコンセンサスが取られ推計されたせいでしょう。
急成長すると予測された分野には、当然、今の言葉で言うと、パソコンやインターネット分野も含まれていました。
ちなみに当時は、必ずしも現在呼ばれている名称では呼ばれておらず、例えば、インターネットは当時は、数ある通信プロトコルのうちの1つを指す名称として認識されていただけで、初期の頃は、そのインターネット・プロトコル自体は全体のネットワーク・トラフィックの中でそれほど目立つ存在ではなく、決して代表的とは言えない存在でした(初期の頃は、UNIX系システム間の通信のみ)。

そして、製品戦略ですが、大体この予測に沿った形で開発予算が配分されていきました。
開発予算に関しても、競合他社に比べて決して負けない、というか軽く凌駕する金額がつぎ込まれていたような気がします。
さて、それから月日は流れ、成長市場として位置付けられた市場は当初の予測を遙かに超えて急成長して行きました。
さぞかし製品は大成功したかというと、10年ほど経って、その結果を見てみると(筆者はその頃はすでに別の会社に転職しておりましたが、近い業界にはおりました)、結果は真逆で、傍目からみると、多くの分野で決してメジャーになることはなく、基礎研究や特許収入などの知的財産を除いて、ほとんどの新規分野から撤退するか撤退間近の状態でした。
これは、しかしながら、この会社だけがそうなったわけではなく、当時のメインフレーム系メーカー(みな大企業です)の大多数は、大なり小なり新規分野に投資していたのですが、それらの分野では決してメジャー・プレイヤーにはなれませんでした。