ところが面白いことに電柱は建て放題で、カメラをどこに向けても電柱や送電線が画面を横切ります。
また、電線や土管を埋めたりするために、道路をしょっちゅう掘り返しています(これは、景観とはあまり関係ない問題で、鎌倉だけの問題ではありませんが)。
筆者はこのブログで何度か触れたように、昔ネットワーク関係の仕事に従事していたことがあり、職業柄ライフラインには結構興味がある方です。
ご存知の通り、通信回線はライフラインとしては一番の新参者であり、先行のライフラインである道路、水道、鉄道、電力線などに、できるだけ沿って敷くのが通例です。
そして、その敷設の仕方は国や地域によってかなり特徴が出ます。
筆者が昔勤めていた電話会社は、アメリカのテキサス州の油田間に張り巡らされた石油パイプラインに沿って電線を敷いて急成長を遂げたベンチャー系通信会社が母体でした。
また、90年代にヨーロッパやアメリカの都市部に光ファイバー網(いわゆる、MAN = メトロポリタン・エリア・ネットワーク)を敷設することで急成長したベンチャー企業に関与していたこともあります。
周知の通り、ヨーロッパの都市は1000年以上前からずっと都市だった場所が多く、ちょっと掘ると必ず何か埋蔵物が出て来るような場所柄ですが、だからといって電信柱を建てて電線を空中にはわせるのではなく、通信回線は電力線と同様に基本は地下に敷設していました。
そして、このベンチャー企業は新規の掘削をできるだけ少なくするために最大限、都市には必ずある”もの”を利用していました。
そのある"もの”とは、都市を象徴する巨大な建造物であり・・・と書くと、何かクイズ番組のようになってしまいましたが、答えは下水道網です。
有名な例では、パリには全長2100Kmにもわたる壮大な下水道網が存在し、その地下空間を下水だけでなく、上水道管を通し、また都市ガス網、通信網、電力網として利用させています。これらの利用料はパリの水道事業の収益金となっています。
(こういう社会インフラが利用できたので、資金力の乏しいベンチャー企業でも通信網を自前で敷くことができたとも言えます。)
下水道に関する古い例では、古代ローマでは既に紀元前700年頃には下水道があったと言われており、一説には古代メソポタミア文明の都市遺跡には紀元前2500年前の下水道跡が見られると言われています。
文明と都市の発生は分離不可分の関係にあり、そして都市と下水道とはきわめて密接な関係があり、 従って、文明とは下水道を流れる”し尿”のようなものです。
冗談はさておき、日本では江戸時代までは下水道はほとんど発達してきませんでした。
日本最大の都市であった江戸でも上水道やゴミ処理の問題は当時大きな都市問題になっていましたが、下水道はほとんど話題になっていません。
きっと発生した”し尿”は人肥として農村へ還流したり自然へ投棄したりして何とかなっていたのでしょう。
これは多分、当時の江戸の都市化の速度が緩やかだったおかげだと思います。
人肥の利用はヨーロッパでも行なわれていましたが、都市化の波が急速でそれだけでは処理が到底追いつかず、下水道が未発達だった頃のパリのおしゃれな街角が実は糞尿だらけだったと言う話は日本でもよく知られています。
続く
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